「マウスピース矯正」「アライナー矯正」とは、取り外しができる透明な「アライナー」と呼ばれる装置を患者様自身が装着して、歯並びを改善する治療法です。
マウスピース矯正には様々な種類があり、当医院で使用する「インビザライン」以外にも同様な作成方法で国内外の様々なメーカーが装置を製作、販売しています。
固定式の矯正器具(マルチブラケット装置)を装着する矯正治療と比べると以下のようなメリット、デメリットがあります。
1. | 装置が目立たない(ただし、装置使用前に「アタッチメント」と呼ばれる歯と同じ色のプラスチックのような突起物を歯の表につける必要があります。) |
2. | 取り外し可能なため、歯磨きが簡単で虫歯のリスクが低く衛生的 |
3. | 食事が今までどおりできる |
4. | 歯の移動が順調であれば来院回数が少なくなる |
5. | 金属アレルギーでも治療が可能 など |
1. | アライナーは原則として食事、歯磨きの時間以外は常に装着する必要がある。アライナーを毎日装着できない場合や、装置を使用する時間が足りない場合(1日20時間以下)は歯が移動せず、予定した治療成果が得られなくなる。 |
2. | 慣れるまでは発音に影響が出る場合がある。 |
3. | 新しいアライナーを装着する際には毎回痛みを生じることがある。 |
4. | 紛失、破損して再製する場合、装置代が高価 |
5. | 通常の矯正装置に比べて歯の移動に制限があるため、治せる症例の適応範囲は狭い。インビザライン単体での治療が困難な場合は他の固定式の矯正装置を併用する場合がある など |
1999年に米国アラインテクノロジー社が「インビザライン」の提供を開始していて以来、世界100カ国以上、500万人以上の治療実績があります。
「クリンチェック」と呼ばれる3次元シミュレーションソフトを通じ、コンピュータ画面上で歯科医師が治療計画を策定し、アラインテクノロジー社の担当者と協議のもと、治療完了に至るまでのアライナーの必要個数や、形状が決定されます。「インビザライン」のアライナーはCAD/CAM(光造形)技術を応用して作製された精密な装置(マウスピース)で、治療開始時に治療終了までのすべてのアライナーが一度に製造、出荷されます。
「インビザライン」は1998年にFDA (米国食品医薬品局)に
より医療機器として認証を受けていますが、日本国内でマウスピース型矯正装置が医療機器として認められるためには、薬事承認されている材料を使用し、日本の国家資格である歯科医師もしくは歯科技工士が製作したものでなければなりません。材料自体は日本の薬事認証を得ておりますが、インビザラインの「アライナー」は日本の歯科医師が設計し、ISOを取得している海外の工場でロボットが製作しています。そのため、医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受けていない未承認医薬品となるため、医薬品副作用被害救済制度の対象となりません。
矯正治療を行う場合、患者様の症状に応じて様々な装置を使用しますが、細かな歯の移動が可能な装置の主流はワイヤーとブラケットを使用する「マルチブラケット装置」と、いわゆる「アライナー型矯正装置」です。噛み合わせに問題があまりなく、比較的歯の移動量が少なく簡単に治るケースでは「アライナー矯正」でも治療が可能と判断しますが、それ以外のケースは「マルチブラケット装置」での治療を行っています。また、永久歯が生えそろっていない場合や顎骨の成長途中の若年者は原則としてアライナー矯正治療の適応外です。
当医院ではすべての患者様について、まずどのような症状や問題点があるかを調べ、その症状を治すためにどのような装置や指導が必要かを検討し治療計画を立案します。最終的な治療方法は患者様の治療方法に対する希望なども考慮して決定していきますが、患者様の症状や年齢、治療に対する考え方等によっては「アライナー型矯正装置」での治療をお断りする場合があります。
日本矯正歯科学会では「アライナー矯正」について以下のようなポジションステートメント(専門家からの意見・注意勧告)が発表されています。アライナー矯正で治療を希望される方はご参照ください。
https://www.jos.gr.jp/asset/aligner_pointer.pdf
※日本矯正歯科学会とは、歯科矯正学・矯正歯科臨床の進歩・発展を目的にし1926年に設立された日本を代表する歯科矯正学を専門とする学術団体であり、日本各地の矯正歯科医を中心に、7,000名程の会員により構成されています。当医院では本学会認定医資格を持つ歯科医師が治療計画を立案し、アライナーを発注しています。
診察とお口の中の写真を撮影し、歯並びや咬み合わせの確認をします。予め記入いただいた問診票をもとに現在の症状や矯正治療の概要や、大まかな治療の流れ・装置・料金について説明を行います。通常はこの時点でマウスピース矯正が可能かどうか判断できます。
お口の中の診査、レントゲン撮影、口腔内スキャナーを使用してデジタルの歯型模型のデータを作成します。スキャン中は小さなカメラを何度もお口の中で動かしながら撮影する感じになります。
精密検査で得たデータを分析し、治療方法、治療方針を決定するため、精密検査から診断までは約1か月の期間がかかります。診断時に検査の結果と治療方針の説明を行い、患者様が治療に同意されましたら治療費のお支払い方法等を確認して治療開始です。アライナー以外の装置での治療や抜歯が必要な方は、それぞれの処置を行った後に装置(アライナー)の作製に進みます。
【アライナー以外の矯正装置(拡大床装置)】
検査時に行った歯型模型のデータをもとにアライナー作製を依頼します。アラインテクノロジー社の担当者と協議しながら作製するため約1か月程度期間がかかります。
抜歯や虫歯の治療が必要な場合は治療後に、そして、アライナー以外の装置による治療が必要な場合は、ある程度歯が移動した後に再度スキャナーにより歯並びのデータを採取します。
【アタッチメント(歯の表面についた突起)】
まずはアライナーの取り外し練習を行います。初めは難しく感じる方もいるかもしれませんが、慣れれば簡単に取り外しができるようになります。1日20時間以上を目標にご使用ください。食事や歯磨き以外の時間は常にアライナーを装着しないと予定通りに歯が動かない場合があるためご注意ください。通常10~14日に一回のペースで新しいアライナーに交換して使用していただきます。必要なタイミングでアタッチメントの装着と、IPRを行います。
■ アライナー治療の準備
歯の表面に歯と同じ色の「アタッチメント」とよばれるプラスチックのような突起を装着します。歯の移動をより効果的に行うために必要なもので、位置や個数は治療内容によって異なります。また、必要な場合は、IPR(ストリッピング・ディスキング)を行います。IPRとは、歯と歯の間にヤスリをかけて少しだけ歯を小さくする処置のことで、歯が痛くなったり見た目に大きな影響がない範囲で行います。
口腔内スキャンを一度行うと、治療終了までの全てのマウスピース(アライナー)が作製されますが、紛失や使い方の間違いを防ぐため次回の来院時までに使用する枚数だけを毎回お渡しします。1~2か月に1度のペースで来院していただき、アライナーが適合しているか、予定通りに歯が移動しているか、アタッチメントが外れていないかなどのチェックを行います。予定通りに歯が移動しない場合は、アライナー以外の装置を併用したり、タイミングをみて再スキャンを行うことがあります。
治療が完了してきれいな歯並びになっても、すぐ装置を使わなくなると歯が動いて歯並びが変わってしまいます。アライナーによる治療が終わった後はリテーナーというマウスピースのような装置を約2年間使用していただきます。2~6か月に来院していただき、リテーナーのチェックを行います。