矯正治療に関するアンケートの結果(2)
治療中の痛みについて
前回に引き続き、以前行った矯正治療に関するアンケート結果について再度ご報告、要約したいと思います。
治療開始前の相談のとき、「痛みはありますか?」「どれぐらい痛いですか?」といった質問をよく受けます。これまで治療をされた方から伺ったことを参考にお答えしているのですが、個人差があることですので、わかりやすくお伝えできているかどうか自信がありませんでしたので、この結果を参考にしていただければと思います。
Q1 年齢は?
10~15歳:20%
16~20歳:18%
21~25歳:20%
26~30歳:19%
31~40歳:19%
40歳~ :4%
今回、アンケートにご協力いただいた患者様の年齢層ですが、マルチブラケット装置(写真1)での治療中に限定したためこのような結果になりました。
写真1) マルチブラケット装置
Q2 治療期間は?
1年未満:31%
1~2年:33%
2年以上:30%
種類の痛み、感じ方は・・・
マルチブラケット装置の平均治療期間は2~3年ぐらいですので、対象とした人の治療期間のばらつきはありません。治療がすでに終わった人も含まれていますが、ほとんどが現在治療中の人の感想です。
Q3-1 歯が動くときの痛みを経験したことがありますか?
はい:93%
いいえ:7%
Q3-2 唇や頬などに装置が当たって、痛みを感じたことがあります
はい:90%
いいえ:10%
約9割の人がなんらかの痛みを感じているようです。これを年代別にみると10代が一番痛みを感じにくく、歯が動く痛みは20 代が一番多く、30代以降は減少傾向にある一方、粘膜などにあたる痛みは年齢が上がるにつれて増加傾向が認められました。
Q4-1 装置を付けてから何日ぐらい痛かったですか?
1日:8% 2~3日:58% 4~5日:23% 5日以上:11%
どの年代でも2~3日が最も多く、21~25歳代では、なぜか5日以上痛い人の割合がやや多くなっていました。
Q4-2 もっとも痛かったのは何日目ですか?
当日:22% 翌日:69%
翌々日:8% その他: 1%
Q4-3 どのようなときに痛かったですか?
食事のとき:59%
歯をかみ締めた時:16%
常に:20% その他: 5%
やはり、治療をした翌日が痛いという人が年齢に関係なく、もっとも多かったようです。痛みを感じやすいのは、歯に力が加わる食事の時が一番でした。「常に痛い」という人の割合が思ったより多いのですが、当医院の集計では5%以下でしたので、ひょっとしたら装置の種類の違いが影響しているのかもしれません。その他の中には「装置で頬に傷が出来たとき」「装置をはずしたとき」などがありました。
Q4-4 これまでの治療でもっとも痛かったのはいつですか?
はじめて装置が付いたとき:64%
ワイヤーを新しく交換した時:31%
セパレーション:2%
その他: 3%
Q4-5 言葉で表すとどんな痛みですか?
ズキズキ:45% ジンジン:42%
シクシク:9% その他: 4%
もっとも痛いと感じたのは、やはり「はじめて装置をつけた時」でした。はじめは慣れないこともありますので、当然の結果ですね。
マルチブラケット装置の治療では、治療が進むにつれて徐々にワイヤーのサイズが太くなっていきますので、そのときに痛みがあることも納得できます。
セパレーションというのは、奥歯にバンド(頭のない銀歯のようなもの)をつけるために歯と歯の間に太い輪ゴムをはめる処置のことです。
Q4-5の質問は痛みの感覚を教えていただきたくて考えた設問だったのですが、私は「ジンジン」「シクシク」が多いと予想していたので「ズキズキ」が一番だったのは意外でした。その他には「ジワー」「ズーン」「あ゛~」などがありました。
Q5-1 痛みには慣れましたか?
はい:91% いいえ:9%
Q5-2 痛みに慣れるのにどれくらい期間がかかりましたか?
1週間以内:50% 2~3週間ぐらい:35% 1ヶ月ぐらい:9%
2~3ヶ月ぐらい:3% 4ヶ月以上:3%
ほとんどの方が装置をつけて、1ヶ月以内には痛みに慣れることがわかりました。年代別に見ると、年齢が上がるほど慣れるのに時間がかかる傾向があります。また、10代の方は全員が3週間以内に装置に慣れているという結果になりました。
写真2 リリーフワックスをつけたところ
今回の結果は、大体これまでに患者さんから伺っていた話と同じで、予想通りという感想です。痛みは個人差が大きいですが、「矯正すると痛いですか?」ときかれれば、今回の結果が示すように「痛くない人もいますが、大抵は痛いです。ただしほとんどの人は1ヶ月以内に痛みに慣れます」と答えるのが妥当かと思いました。
歯が動いて痛いときは、歯に力が加わらないようにやわらかいものを食べる」歯茎の血行をよくするために「ぬるま湯を口に含む」「ハブラシで歯茎をマッサージする」ことで、一時的に痛みが緩和できます。夜眠れない程の痛みがある方(めったにいませんが)は、我慢せず市販の鎮痛剤(痛み止め薬)を飲んで下さい。
唇や頬に装置が当たる場合は、「リリーフワックス」(写真2)をブラケットに付けていただくといいと思いますが、2ヶ月以上経っても痛い場合はレジン(プラスティックのようなもの)でカバーすることで対応していますので、遠慮なくご相談下さい。
痛みに慣れるまではいろいろ大変だと思いますが、皆さんがんばって治療を続けて下さい!