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不正咬合の種類(3)上顎前突
Q:上顎前突(じょうがくぜんとつ)とは、どのような歯並びの状態のことでしょうか?
奥歯で嚙んだ時に上の歯が下の歯よりも前にある状態、いわゆる「出っ歯」のことです。
上顎前突はいろいろな要因によって分類することができますが、
①上あごが大きすぎるタイプ
②下顎が大きすぎるタイプ
③骨格に問題はないが歯だけが前に出ているタイプ
に分けることができます。
成長期のお子さんの場合は、どのタイプに属するかによって治療方法が変わってきます。
これから成長によって下の顎が大きくなるため、治療効果が得られれば歯並びだけでなく骨格的な変化が期待できます。
大人の場合は成長がないため、主に上の前歯を後ろに引っ込めることで出っ歯を治していきます。
Q:そのままにしておくとどのような弊害がありますか?
一番の弊害は見た目が悪いことですが、それ以外にも一般的に以下のような悪影響があるといわれています。
・ ぶつけたときに歯が欠けたり折れやすい
・ 発音(特にさ行)がしづらい。
・ 口が閉じづらいため口呼吸の原因になる。また、食べ物が食べづらく、こぼしやすい
・ 前歯で噛めないので、奥歯ばかりで噛むようになり、奥歯がすり減る。
Q:原因は何ですか?
上顎前突になる主な原因は①遺伝的なものと②後天的なものに分けることができます。
① 遺伝的な理由
骨格的に上の顎(あご)が大きい、下の顎(あご)が小さいなど、子供の顔が親に似るのと同じ理由で、出っ歯になりやすい方がいらっしゃいます。
② 後天的な理由
指しゃぶり。鉛筆やタオルなどを噛む。下唇を噛む。うつ伏せで寝る。口がぽかんとあいている。など、様々な癖が原因で上顎前突になることがあります。又、クラリネットやサックスなどの管楽器が原因で前歯が出ることもあります。
一般的には①と②の両方が重なると症状は重くなる傾向にあります。
Q:治療方法にはどのようなものがありますか?
成長のあるお子さんと成長のない大人の方で治療方法が違います(図1)。成長がある場合はできるだけ骨格の問題を改善するような治療方法を試してみますが、残念ながらすべての方がうまくいくわけではありません。効果があまりない場合は、成長終了後に大人と同じ治療を行います。
子供と大人共通する治療方法の一つは前述した、出っ歯の原因になっている癖を治すことです。簡単ではありませんが、原因を取り除かないと、予想した治療結果が得られなかったり、治った後に再発することがあります。
図1 上顎前突の治療法
稀ですが、極端に下顎が小さかったり、顎の関節の発育がひどく悪い場合などは外科矯正(手術)をしないと治らないケースもあります。
Q:どのような装置を使いますか?
第1期治療では、ヘッドギア(図2)で上顎の成長を抑制したり、バイオネーター(図3)のようなファンクショナルアプライアンスを用いて下顎の成長を促進します。しっかり使用できればある程度の効果は期待できますが、すべての人がうまくいくわけではありません。
大人の場合は上下の顎の位置関係に問題があったり、歯の位置に問題があったりする場合は永久歯を何本か抜いてスペースを作り、エッジワイズ装置を使用して(図4)上の前歯を後ろに下げて治療します。
まとめると、成長のあるうちは習癖などの上顎前突の原因を取り除き、上下顎骨の位置関係改善のできる装置を使用して治療を行い、永久歯が生え揃い、顎の成長がある程度すすんだら抜歯が必要かどうか判断して、すべての歯を並べる治療(第2期治療)を行います。
図2 ヘッドギア
図3 バイオネーター
図4 エッジワイズ装置