清村矯正歯科

清村矯正歯科のブログでは、矯正歯科治療の疑問や症例について解説しています。

Archive for 1月, 2017

よくある質問Q&A 子供の矯正治療(5)

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新年明けましておめでとうございます。年末年始はいかがお過ごしだったでしょうか?
今回も、初診相談やメール相談などで皆様からよく質問されることについてお答えしていきます。


Q9.こどもの時に治療すると、大人になってから元に戻るのでしょうか?

この質問は、成人の方が初診相談のときに「こどものときにやっていたのですが、元に戻ってしまって・・・」というお話をたまに耳にするので、それに対する答えです。
当医院で治療を開始されている方はご存じと思いますが、子供の治療(混合歯列期の治療)と大人の治療(永久歯列期の治療)は治療方法や目的が違います。
こどもの治療では、主にこれから生えてくる永久歯がきれいに生えてくるよう顎を広げたり、骨格に問題がある場合は、できるだけそれを悪くならないように顎の成長を調節したり、予防的な治療を行います。
結果としてこのような治療だけで、親知らずを除く全ての永久歯がきれいに並んで、かみ合わせも問題ない状態になることはありますが、個々の歯の細かい位置の修正などはマルチブラケット装置を用いた大人の治療が必要になります。
また、こどもの治療を行っても十分な治療効果が出ないこともあるため中学生以降に大人の治療(永久歯列期の治療)で、抜歯が必要になるケースもあります。
「こどもの時治療したのが元に戻った」と聞いた場合に、考えるのは(1)適切な治療を行っていたかどうか?ということと(2)一度治ったのが元に戻ってしまう原因があるのか?ということです。
つまり、こどもの時に当時生えていた永久歯だけをきれいに治して、治療が終わったと考えて、その後残りの永久歯が生えてきたために治した歯並びも動いたために「元に戻った」と思っているかもしれませんし、きれいに治った後に、保定装置を使用しなかった可能性もあります。このような治療は(1)の適切な治療が行われなかったために起こった「後戻り」です。
また、受け口が一度は治っていたのに思春期の成長期に、元に戻ってしまった。あるいは、以前ご説明したような唇をかむ癖、口で呼吸をする癖などが治っておらず、出っ歯や開咬などの症状が成長と共に目立つようになった。という場合は、(2)の原因のある「後戻り」ということになります。
「こどもの時治療したのが元に戻った」という人の場合はこの二つのどちらか、あるいは両方が理由のことがほとんどです。混合歯列期に治療を開始しても、親知らずを除く全ての永久歯が萌出するまで経過を観ていかなければ「いわゆる こどもの矯正治療」は完了ではありません。また、マルチブラケット装置による治療を行った後は必ず保定装置を使用しないと、歯並びは悪くなってしまいます。
まとめると、こどもの時の矯正治療だけで症状が改善されることはありますが、すべてのケースではないということ。また、せっかく良くなっても、成長による変化や、保定をしなかった(できなかった)ために歯並びが悪くなることがあるため、「こどもの時の矯正治療は、大人になってから元に戻る」と誤解されることがあるということです。



Q10.子供の矯正治療中に特に注意することはありますか?

こどもでも大人でも、使用する装置が同じであれば注意することは同じはずですが、特にこどもの場合注意すべき点は、
(1) 歯磨きがうまくできない
(2) 装置の取り扱い
(3) 状況や状態を正しく説明できない
などが挙げられます。
01
(図1)
02
(図2)
図1,2を見比べると、同じ年代のお子さんで同じ固定式の装置を使用しているのですが、図2の方は歯磨きが不十分で歯肉炎になっています。
図3はお子さんによく使う取り外しができる拡大装置ですが、使い方を十分説明してもいろいろ理由をつけて使わなかったり、装置を外して遊んだりして、正しく使用できないために予定通りに歯が動かないことが時々あります。
また、大人の場合はめったにありませんが、こどもの場合はたまにどこかで外して失くしてしまうことがあります。
03
(図3)
(1)、(2)については、個人差がありますので問題なく歯磨きもできて、説明通りに装置を使用できるお子さんが半数以上です。ただ、成人と比べるとどうしてもできない人の割合が多いため、ご家族の方が仕上げ磨きをしてあげたり、ちゃんと使っているか確認してあげる必要があります。
(3)は、たとえば図1,2のような装置が壊れてしまったときに、大人であれば「○○を食べているときに奥歯で咬んだら装置が取れた」というように壊れた状況が理解、説明できるため次回からは壊れないように食事を注意したり、術者側でも対応ができます。
しかし、お子さんの場合はそのような説明が出来なかったり、正直に外れたときの状況を言わなかったりすることも考えられるので、再発しないように対応するのが難しい場合があります。
ただ、このようなことはお子さんの治療では仕方がないことですし、何度も繰り返さなければ治療に大きな影響はありません。